亥之吉の日々JOURNAL

「モケットマーガレット」ジャガードパイル織について

亥之吉の商品のほとんどは自社で生地にプリントして製品にしております。
プリントするのは帆布生地や綿、麻やシルクなどがメインで季節を問わず使っていただけますが、寒い季節になると冬っぽい生地感のアイテムが欲しくなります。
今までにフランネルやツイード、コーデュロイなど検討し、ツイードポシェットがま口などを作りましたが、もっと亥之吉の柄が映える素材はないかと探していたところ、高野口パイルに辿り着きました。

亥之吉×中谷パイル様
柄の打ち合わせもアドバイスいただきました


2018年に京都プリント染色協同組合の産地連携によるコラボにて高野口パイルを生産するメーカーの中矢パイル様と出会えたことがきっかけです。
毎年高野口パイルファブリック展「ぷあぷあ」を開催されていています。
和歌山県高野口のパイル織物は昔から縫いぐるみや毛布などでお馴染みの素材で、最近はフェイクファー人気で注目されています。

亥之吉×中谷パイル様
どの生地感も良くて悩みました

ジャガード織の事をほとんど知らなかったので亥之吉スタッフで中矢パイルさんに見学に行き、2019年に「モケットとりのこえ」2021年に「モケットマーガレット」を制作いたしました。

中矢パイルさんは60年以上ジャガードパイル(金華山織り)の専業メーカーとして椅子の張り地(観光バスの椅子の素材)などのインテリア生地を生産されていて、最近ではアパレル衣料のコート、ジャケットなどオリジナルのジャガード生地などもブランドとコラボして作られています。

亥之吉×中谷パイル様ジャガードパイル
横糸のシャトル

中矢パイル代表の中矢祥久 (なかや・よしひさ) さんには分かりやすくパイル織の事を教えていただきました。事務所にはたくさんのジャガード織生地見本があり、中矢さんの配色センスも素晴らしく、モケットマーガレットの配色もアドバイスいただきありがとうございました。


パイル織物とは、布生地の表面にパイル(ループ)を出した織物で、そのループをカットしないものの代表的なものがタオル(カットして手触りを良くしたものもあり)でカットしたものの代表的なものが、モケット・ベルベットや、コーデュロイなどです。

亥之吉×中谷パイル様ジャガードパイル
たくさんの細い糸が集まってジャガードパイル生地になっています

ジャガードパイルには後染と先染の作り方があります。
後染ジャガードパイル(金華山織り)は綿とアクリルとレーヨンで生機(きばた・染色する前の生地)を織ります。
素材によって染まる染料が違い、その特性を生かして生機(きばた)を染め分けていきます。

亥之吉ジャガードパイル織
亥之吉のモケットマーガレットの生機の生地(花芯のみ先染しております)

亥之吉のモケット生地は後染で作られており、今回は黒・ローズ・クリームをそれぞれ後染にて染めております。
マーガレットの花芯部分のみ先染ポリエステルの糸でグレーに染めた状態の生機を織ってもらい、それぞれの色を後染で染めてもらいました。

亥之吉ジャガードパイル織
亥之吉のモケットマーガレットローズ・先程の生機がこの様に綺麗に染まります

配色デザインは作っておりましたが、A3サイズの紙プリントと実際出来上がった反物はイメージが変わりますので、出来上がるまではドキドキです。
後染のメリットとしては小ロットで短い納期で済む事。
ただ、色数が素材ごと(綿・アクリル・レーヨン・ポリエステル)になりますので限られてきます。


亥之吉×中谷パイル様ジャガードパイル
先染は糸が先に染められています

先染の場合は糸を先に染めて織っていく方法で、色数が多くなるほど色糸も多くなります。コストが高くなりますが、色数の多い素晴らしいジャガードパイル生地が出来るそうです。
中矢パイル様のサイトで社長が詳しく説明されていますのでよろしければご覧ください。http://www.kinkazan.jp/

亥之吉×中谷パイル様ジャガードパイル

亥之吉×中谷パイル様
たくさんの糸のコーンがセットされています

ジャガードパイルを織るには通常の織物のようにたくさんの糸のコーンを全てセットし、機械によって分けられた縦糸の間を横糸を通したシャトルを走らせて織物が出来上がります。

亥之吉×中谷パイル様

パイル織りはこの時2枚同時に生地を織っていき、織られた2枚にさらに毛を垂直に織り込んでいった後、真ん中(2枚の生地の間)をカットしていきます。

亥之吉×中谷パイル様
2枚にカットされていきます

2枚の内側がカットされた毛が起毛した状態になり、ジャガードパイル生地の表面となります。
同時に同じ生地が2枚作られていきます。

亥之吉×中谷パイル様ジャガードパイル
2枚に別れた生地が反物になっていきます

織り機のはるか上部には穴の空いた紙の束がたくさんかけられています。
この紋紙(モンガミ)は図案を織るための型紙で、織り機と連動しジャガードパイルの柄の凹凸になります。

亥之吉×中谷パイル様ジャガードパイル
織り機の上には紋紙が

まだまだお伝えしきれない事がたくさんですが、今回はこの辺で。

今年の新柄「モケットマーガレット」は亥之吉のマーガレット柄をパイル織に仕立てております。見る角度によって光沢や陰影が美しい生地になっています。
ジャガードパイル織のモコモコ感が、シンプルでありながらマーガレット柄の良さを引き立てます。

亥之吉横長ベンリーがま口モケットマーガレット
横長ベンリーがま口モケットマーガレット黒

素敵な生地に仕上げていただきました。

亥之吉ベンリーがま口モケットマーガレット
ベンリーがま口モケットマーガレットクリーム

これからも亥之吉のオリジナル柄をジャガードパイル生地にして発売できたらと思っております。

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